意図の設定に隠された神経科学と魔法を探究し、そして、最適な未来を自分のために創造する。

クリス・ハルボム、ティム・ハルボム

“人生とは鏡であり、鏡に向かって考えたことを映し返してくる”
– アーネスト・ホームズ

人は絶えず自分の未来を創造しています。自らの思考、行動、感情、ビリーフ、バリュー、目標、夢を通して未来を生み出しています。それをどの程度意識していたとしても、その事実に変わりはありません。

“今この瞬間の知覚”と“自分が作り出す未来”という組み合わせは、その人の潜在意識のプログラミングが色濃く映し出されたものなのです。

将来の夢や目標は、潜在意識で考えたことを反映しているだけでなく、RAS(網様(体)賦活系)を仲介しています。

RASとは、意識と無意識の間でフィルターの役割を果たしている脳の一部です。脳幹の中心部に位置するRASは、意識から受けた指令を無意識に届けています。

この生物学的な機能が働いているため、あなたが考えたことや注意を向けたことはすべて無意識に染み込んでいき、未来のどこかの時点で再び表面化します。

たとえばある車を買いたいと思ったとたん、買おうと思っている車をあちこちで見かけるようになったという経験はありませんか? これがRASの機能です。※1

望む目標を実現させ、最適な未来を作り出すために、潜在意識に働きかけようと思うのであれば、意図の設定が重要な鍵を握ります。

Intent(意図)の意味をメリアムウェブスター辞典で調べると、「マインドに方向を与え、目標へと続いていく道を進ませること」を意味するintend(~を意図する)という言葉に由来すると書かれています。Intendはラテン語のintendere(~の方へ伸びる)という言葉から派生しています。

意図を設定すると、望ましい目標や未来に向かって伸びていくようにRASを方向づけていることになります。そしてさらに、そこへ至る旅を楽しむように方向づけることにもなります。

意図を設定してRASをポジティブにプログラミングする体験をするために、次の3つの文章を自分に言ってみてください。

  1. 「今夜のディナー、楽しめるといいな」(実際にどのように考えているか(内面の映像、声、気分)に気づきましょう。)
  2. 「今夜のディナーを楽しみたい」(実際にどのように考えているか(内面の映像、声、気分)に気づきましょう。最初の質問とはどのように違いますか?)
  3. 「今夜のディナーを楽しむぞ」(実際にどのように考えているか(内面の映像、声、気分)に気づきましょう。前の2つの質問とはどのように違いますか?)

使う言葉をほんの少し変えただけで、体験も大きく変わることに注目してください。
多くの人にとって、1の言い方だと疑念が作り出されます。

別の言い方をすると、様々な可能性を表象する複数のイメージが現れるでしょう。
ディナーを楽しめるかもしれないし、楽しめないかもしれないというイメージです。

2の文章は異なる表象を作り出すはずです。

「今夜のディナーを楽しみたい」と言うとき、未来の時間に欲しいと思うものが見えますが、今はそれを持っていない自分が見えるかもしれません。

欲しいと思うものが見えるため、その未来に引きつけられるように感じるかもしれません。しかしそこには疑念が入り込む隙間が残っています。実際にその体験をしている自分に入ることが難しいからです。

3番目の「ディナーを楽しむぞ」というイメージは、今、まさにその体験をしていて、完全に楽しんでいるという体験に自分を入れてくれるはずです。

何かが実際に起きると意図することは、その目標を達成したという体験に自分をアソシエイトさせ、それに紐づく感情、イメージ、音までも体験させてくれます。

意図を設定することは、何かを実現させるという意識的な意志と潜在意識とを結合させるようなものです。まるで、その出来事が起きることは「予期される当然のこと」だとRASに伝え、そこには疑念の余地は一切ないとメッセージを伝えているようなものです。

意図の設定とは、望んでいる目標を達成する旅路を、どのような旅路にしたいのかという準備をマインドとRASにさせるようなものです。

そして目標の設定とは、達成したい最終結果を表しています。

偉大な起業家リチャード・ブランソンを例にあげましょう。彼はキャリアの早い段階で、世界で最も大きな成功を収めるビジネス帝国の1つを築くという目標を設定しました。

また、そこへ至るまでの道のりは、できる限り冒険に満ちて愉快なものにするという意図を設定しました。

目標に集中し続け、意図に忠実にあり続けることで、ブランソンは大いに楽しみながら、ビジネスの世界で大成功を収めました。

意図を設定するという考え方を私達が最初に学んだのは、数年前、ユタ州南部の砂漠地帯で一緒にワークをした一人のペルー人のシャーマンからでした。私たちはNLPプラクティショナーのグループと一緒に、シャーマンのヒーリングパワーをモデリングしていました。

メンバーのひとり、チャールズという名前の男性が多発性硬化症の初期症状を患っていたため、彼とヒーリングワークをしてくれないかとシャーマンに聞きました。

シャーマンは「いいですよ」と答えるとチャールズを地面に寝かせ、奇妙なヒーリングの儀式を始めました。

まずシャーマンはガラガラを取り出してチャールズの頭の上でガラガラと振り、長い時間、何かを唱え、歌っていました。

それからチャールズの腕を取り、やさしく話しかけました。このような動きを1時間近く続けていました。

最後に、シャーマンはチャールズを見て立ち上がるように言いました。そして、助け起こすように手を差し伸べました。シャーマンによる儀式が終わるとチャールズは立ち上がり、興奮して言いました。
「ずいぶん楽になったよ!」

グループの全員がこの結果に感銘を受け、シャーマンに尋ねました。
「実際の治癒は、いつ起きたのですか?」と。

私達の質問にとても困惑しているという表情を見せながらも、シャーマンはこう言いました。
「私が意図を設定したときに治癒は起きたのですよ。あとは単なる儀式です。」

このコメントでシャーマンが言わんとしていたことは、意図が明確になった時、チャールズを治癒するという目標の達成が簡単になったということでした。

つまり、シャーマンとチャールズが同じシステムの中に入れば、彼が起こすどのような変化も、チャールズの健康状態を含む、より大きなシステムに反映されることを彼は理解していたのです。

システム思考では、システムの一部が変化すると、そのシステムのほかの部分も変化するという前提があります。

人類学者でありシステム思考論者だったグレゴリー・ベイトソンは、著者『Steps to Ecology of the Mind(精神の生態学)※2』 の中で、体系的視点から意図が持つ力を比喩的に述べています。

“この宇宙における現象が、因果関係とエネルギーの交換によってリンクされていると見た時、その結果として見えてくるのは、複雑に枝分かれしながらも互いに相互接続した一連の出来事という光景である。

この宇宙の特定の領域(特に環境の中の生命体、生態系、社会、コンピューター)において、関連する一連の出来事は閉回路を形成している。

因果的な相互接続は、スタート地点として選んだところから同地点まで回路を周回して戻ってくる軌跡を辿ることができ、そうした意味から閉じた回路ということができる。

このような回路の中では、回路内のいかなるポジションでの出来事も、後になってから、すべてのポジションに影響を及ぼすことが予想される。”

意図の設定は、意識のエネルギーと注意を未来の目標に向けることで、潜在意識とRASを望む結果に集中させ続けるためのパワフルな方法です。

私たちの潜在意識と意識とは、人が“現実”と呼んでいる大きなシステムの中で共存する1つのシステムを作り出しています。

一人一人がどのように考え、行動し、振る舞うかによって、私たちの外部にある現実という大きなシステムに直接影響を与えます。

そして私たちが意図を設定した時、一連の出来事を発動させることによって、内的な現実と外的な現実の両方に影響を与えます。

私たちは、より深い潜在意識の思考に直接つながっている、そして望むアウトカムへの全般的な意図、それによって展開されていく旅路に直接つながる新たな一連の出来事を作り出しています。

したがって、シャーマンの「治癒の儀式」がチャールズの潜在意識に与えたものは、このプロセスを“巻き付けられる”何かを与えたことは明らかです。

治癒の儀式、セレモニーは、チャールズの潜在意識に安らぎを与えるための1つの方法であり、実際の行為は体系的に行われていました。

システム全体に影響を与えることなく、システムの一部を変えることはできません。

つまり、意図を設定するということは、望むものを作り出すようにRASにポジティブなメッセージを送っているだけでなく、あなたを取り巻くより大きなシステムにも影響を与えているということでもあります。

意図の設定は、最適な未来の創造や目標設定に有効なだけでなく、日々の暮らしの中でも非常に役に立ちます。例えば混み合った駐車場で車を停めたいときには、空きスペースがすぐに簡単に見つかるという意図を設定することができます。

または、上司との重要なミーティングも、スムーズに難なく進めたいと願うかもしれません。この場合、ミーティングを通して、落ち着いてはっきり話すという意図を設定することができます。

ではここで、具体的な目標と未来に関連した意図の設定をするための簡単なプロセスをご紹介します。

  1. 意図を設定したいと思う目標や状況を考えます。
  2. その状況において、または目標を達成することにおいて自分はどのような体験をしたいのか、まずは自分のための意図を設定します。
  3. 他者か関わるのであれば、彼らとどのような関わり方をしたいのかという意図を設定しましょう。もしかしたら、楽しむ、新しいことを学ぶ、生産的に、安らぎを感じる、幸福、愛情、尊敬、穏やかさを感じる、助け合う、または、互いにつながっていると感じる関わり方かもしれません。
  4. その最適な未来の状況にいる自分は、どのような感じなのかを頭の中に描いてみましょう。意図を設定した状況のなかで、自分が何を体験しているかに気づきましょう。何が聞こえますか? 自分に向かって何を言っていますか? 何が見えて、何が感じられますか?

クリス&ティム・ハルボム氏より許可をいただき掲載しています。

https://nlpca.com/creating-an-optimal-future-for-yourself/

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参考文献

  1. 邦題『夢は、紙に書くと現実になる!』 ヘンリエッタ・アン・クロウザー
  2. 『精神の生態学』 グレゴリー・ベイトソン
  3. マネークリニックTMプログラム-意図の設定プロセスより
    開発:2000年ティム、クリス・ハルボム